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心臓検査を受けてみた。冠動脈CT検査とカテーテル検査

私は、半年ほど前、体調不良から、立て続けに二つの心臓検査を受けました。

  • 冠動脈造影3D-CT検査
  • 冠動脈カテーテル検査

普通は、そうそう経験することのない検査ですが、心臓病は三大成人病のひとつ、生活のどこかで心臓検査に関心をもつ機会があるとおもいます。

検査を受ける側の目線ですが、上記の検査がどんなものなのか、かかる費用を含めて私の経験をご紹介しようとおもいます。

なお、検査時の様子や検査費用は、あくまで私個人の場合です。医療機関によって異なると思いますのでご了承ください。

心臓のようすがおかしい

半年ほど前の休日の早朝、私は胸部心臓付近の痛み、激しい動悸、吐気に襲われて、数時間起き上がれませんでした。

その翌日に総合内科で、血液検査やレントゲン、心電図、心エコーなど一通りの検査を受けました。しかし、結果は異状なし。

一時的に貧血とか精神的な原因かとおもいましたが、倒れこむほどではないものの、毎日のように、気分や時間帯に関係なく動悸や、さしこむような胸の痛みがおこります。

食後に動悸、階段で動悸、早朝に動悸。そして胸痛。本当に異常はないのだろうか?

まさか心臓が?

このような疑いを抱いてしまうと、とりあえず循環器内科にいく他ありません。

循環器内科で冠動脈CTを勧められる

近所にある、小規模の循環器内科の医院にいきました。そこでの検査内容は、総合内科とほぼ同じものでした。

健康診断では毎度のことですが、この日の血液検査でも、悪玉コレステロール(LDL)と善玉コレステロール(HDL)の比が3を超えていました。

慢性的な睡眠不足、偏った食生活、運動不足に長時間のIT系のデスクワーク、そして喫煙。年単位で禁煙は2度したものの、ストレス超過でタバコ復活。十分すぎるほど不摂生の自覚がありました。

このことを医師に伝えると、

「CT検査を受けてみますか?」

医師はそういいました。

心臓検査を受けないと心の問題かどうかもわからない

自分でも心臓疾患の情報を医療機関のページをネットでよく調べるようになり、心の問題で狭心症に似た症状があることを知りました。概ね精神的原因とされるものとして、

心臓神経症

あるいは、もっと広い概念で、

身体表現性障害

という、いずれも心療内科の範疇である病気があります。

心臓神経症の場合、狭心症に特有とされる「しめつけられるような痛み」ではなく、ちくちくするような痛みが多いらしく、私の場合も「しめつけられるような痛み」とは表現しづらい痛みでした。

しかし、この心の問題は心臓の検査を受けないことには、はっきりしません (なので、原因不明は全部心臓神経症に寄せてる、という感じもしますが )

もし冠動脈が狭窄していたらステントをいれるかバイパス手術をするしかないとか、そもそも明日、心筋梗塞になったら?などという思いが脳裏をよぎるようになり、そんな想像自体がストレスでした。

心臓疾患は、最悪は突然死に至るというイメージがあります。

異常のないことを確認し、そんな心配を払拭するためにも、私はCT検査を受けることにしました。

冠動脈造影3D-CT検査

冠動脈造影3D-CT(以下、CT検査)は、心臓を細かく断層撮影し、その撮影データからコンピュータで心臓の3D画像を再構成します。部分的な断層画像も作成されます。

CT検査には、造影剤として使用されるヨードについて少しばかりリスクがあります。そのことを承諾して検査を受けます。

私が受診した医療機関では、

  • 死亡リスク、40万分の1(0.00025%)
  • 呼吸困難やショックなど重篤な副作用、2500分の1(0.4%)

ほかに、蕁麻疹などの軽い副作用の可能性。死亡リスクは、まあ、これはゼロとみなしてよいなと思いました。重篤な副作用てのが若干気になりましたが。

また、ヨードを使うため、腎臓や甲状腺に異常がある方、妊娠中の方などは、この検査は受けられないとのことでした。

検査機器

私が受診した医療機関のCTは、東芝メディカルシステムズ(現キヤノンメディカルシステムズ)のAquilion CX Editionで、センサー64列128スライスの分解能のものでした。調べてみると2009年発売で、約10年前の古いタイプ。

2019年現在、例えば、キヤノンメディカルシステムズの最新型のAquilion ONEシリーズでは、320列・640スライスと、格段に性能が上がっているようです。

もちろん、検査を受けたときは、CTの性能など、気にもとめていませんでしたが・・・

検査と費用

検査当日は、最初に血圧検査と血液検査をし、それから医師の問診をうけます。その後しばらくまたされ、検査室に入りました。

CTの検査台に仰向けになり、20秒程度、息をとめる練習をさせられます。撮影時は息をとめる必要があるためです。

造影剤としてヨードが静脈から注入され検査開始です。看護婦さんから、

「造影剤を注入すると温かい感じがしますが異常ではないです」

といわれました。

しかし実際に造影剤の注入がはじまると、温かいというより熱い感じがしました。

おどろいたのは、その熱(造影剤)が体内に広がる速さです。秒速30~40cmくらいでしょうか、つま先まであっというまに熱が伝わるのがわかりました。

こんなに高速に血液を巡らせて何十年も生命が維持されているかとおもうと、よくできてるなと不思議な感じがしました。

CT検査は15分程度で何事もなくおわりました。

費用は、3割負担で約1万4千円でした。検査にかかったトータルの時間は4時間くらいでした。

まさかの結果に

五日後、CTの検査結果がでたので、循環器の内科へ。

「これがCTの結果ですが、ここなんですけどね・・・」

ディスプレイ上の一点を指示して、医者の言葉がとまりました。冠動脈の一部、血管がY字に分岐するところに、白いでっぱりがみえました。

「うーん、CTでは、精度的に限界で確かなことがいえませんが、動脈硬化の可能性があります」

えっ?

「カテーテル検査をお勧めします。念のため詳しく調べたほうがいい」

結局、明確な診断が得られず、疑いだけが深まる結果になりました。医師にこういわれると、ほとんど心臓病が確定してしまった気分で、落ち込みました。

割と大きい病院への紹介状を書いてもらいましたが、その紹介状をもったまま、私は一週間くらい迷いました。カテーテル検査はそれなりにリスクがあり、ハードルが高いようにおもえたのです。

しかし、症状が治まらない中、最悪の場合が「突然死」である心配を抱えて生活をしていくわけにもいかず、カテーテル検査を受けることにしました。




カテーテル検査へ

カテーテルは動脈から入れます。検査後、カテーテルの穿孔部の止血処置は約4時間ほどなので、日帰りも可能です。ですが、動脈なので、再出血があると大事になる可能性があり、このため一泊の入院を勧められました。私は入院検査を選びました。

カテーテルの悩みどころは、心臓入口までの侵襲的な検査だけに、リスクがそれなりにあることです。

リスク

心臓カテーテル検査を受けるためには、次のようなリスクを承諾し、承諾書にサインする必要がありました。

  • 死亡リスクは、0.02%
  • カテーテルによって血栓をはがすことによる脳梗塞などの血栓症
  • 心タンポナーゼ(カテーテルが血管を破り心嚢に血がたまる)
  • カテーテル穿孔部の神経損傷(動脈には神経が並走している)
  • 造影剤によるアレルギー症状

0.02%で最大級のリスク「死」に至るというのは、自分事となると考えさせられます。1/5000で墜落する飛行機に乗るだろうか?などと考えたり。ほぼゼロとみなせる3D-CTの 1/400000に比べるとオーダーが2つ違います。

脳梗塞や、心タンポナーゼというのも、おっかないかぎり。というか、カテーテル検査って、どえらい検査だなあ、と思いました。

余談ですが、最近、下記のような恐ろしい医療事故がありました(なお、カテーテル検査とは目的が違う手術です )。

検査

午前十時に入院、病院服に着替え、まず左腕に生理食塩水の点滴。少しして、看護婦さんに車いすで検査室へとつれていかれました。

検査室は手術室のような感じで、広く感じました。おどろいたのは、手術衣の色から察するに医師が5人いたことです。

看護婦いれて計6人。 動脈硬化の程度によっては、ステントとか、さっそく次の処置ってこともあるのかな?あるいは緊急事態を想定して・・・というおもいが頭をよぎり、緊張しました。

検査台の脇のステンレスのトレーの上に、カテーテルがごちゃっと乗っているのが見えました。何種類か色違いのものがありました。釣りで使う太いテグスのようでした。これを心臓まで・・・ね。

この病院の場合、カテーテルを入れる位置は、右腕の肘の内側あたりの動脈でした。そこに局所麻酔の注射をされたとき、内心、ここに動脈があるんだ、この辺を切ったら危ないんだな・・・などと、恥ずかしながら肘付近の動脈の位置を初めて知りました。

カテーテル挿入が始まったそのときです。穿孔部から右手指先へとビリビリと感電のような痛みが走りました。(痛っ!!)とおもったのですが口には出しませんでした。幸い、少しすると痛みは収まりました。あとから考えると、このとき、何かが少しばかり神経に触れたようです。

カテーテルが心臓へ進んでいく感じはまったくしませんでした。いつのまにか、検査台脇の液晶モニタに自分の心臓の冠動脈が映しだされていました。私はチラ見しただけで、早く終われと天井に視線を移しました。ビビりですね。

血管を痙攣させる検査

カテーテル挿入から5分くらいが経過したとき、

「順調に検査が進んでいますよ」

看護婦さんが、そう声をかけてくれました。

やがてカテーテルの手技を行っている主治医が、向かいの担当医と、いくつか言葉を交わしました。その少しあとのことです。

ドクっ

という感じの、息が止まるようなインパクトが心臓にあり、あせりました。!?とおもっていると、幸い直ぐに楽になりました。

このあと知ることになるのですが、これは、心臓の血管を少々痙攣させる薬剤をカテーテルから注入したために起きたことです。

もちろん、その直後に、痙攣を解除する薬剤を注入するので、すぐに楽になります。

事前に私は知らなかったのですが、これは、心臓血管の痙攣のしやすさを調べるために行われる検査でした。

結果

カテーテルを抜き、検査は無事おわりました。

圧迫止血の処置がされると、検査室のその場で、 私の冠動脈の様子がモニタで再生され、担当医が検査結果の説明をはじめました。

動画だからってこともありますが、3D-CTの画像と比べものにならないくらい、私の血管の様子が鮮明に映し出されています。

「血管の狭窄はありません」

担当医はそう言いました。確かに素人目にも、CT画像でみた狭窄部はみあたりません。「白いでっぱり」は幻でした。何かの間違い・・・だったのでしょう。

しかし、薬剤による私の冠動脈が収縮する映像を再生しながら、担当医はこういいました。

「血管がやや痙攣をおこしやすいようです」

虚血性心疾患狭心症・心筋梗塞)には動脈硬化によるものの他に、血管の痙攣によるものがあります。日本人には、このタイプの狭心症が他の人種にくらべると多いとのことでした。

動脈硬化という不都合な真実は幸い幻影でしたが、微妙な結果となりました。念のためニトロペン(ニトログリセリン)の錠剤を処方されたものの、精神的な原因による可能性が強いとのことでした。

検査に要した時間は説明を含めて30分くらいでした。11時すぎにはベッドにもどり、利き手の右手は圧迫止血で痺れているので、点滴針が刺さっている左手で昼の病院食をぼそぼそと食べたのでした。

圧迫止血は長い

圧迫止血時の右腕を自分で撮影。充血しまくり。

圧迫止血の圧力は想像以上に強いものでした。右手が赤くうっ血して浮腫み、痺れて箸がもてないほどです。

圧迫止血は約4時間かかります。30~60分ごとに看護婦さんが圧力を下げてくれますが、最初の1時間くらいはけっこう鈍痛がしました。ただ、医師によれば、これでも進歩したようで、以前は止血に6時間かけたとのことでした。

15時頃に、圧迫止血が終わり、そのあとは、暇を持て余まし、スマホで電子書籍を読んで過ごしました。

入院検査の費用

カテーテルの入院検査の費用は、3割負担で約4万8千円でした。全額だと16万円の計算です。個人的な感覚ですが、医師の数、検査設備、止血のケアを考えると安いような気がしました。

合併症?

検査から三日後、普通にPCでの仕事を再開しました。ところが1時間くらいキーと叩くと、右手が痛くて、キーが打てなくなりました。

手の甲をみると、毛細血管が赤く浮かんでいました。

このとき、カテーテルを挿入するときのビリビリとした痛みが思い出されました。並走する神経に傷があるのかもしれないとおもいました。しかし、それは事前に知らされていたリスクなので、医療ミスではありません。

しばらく様子をみて、痛みが増したり、治まらなかったりしたら、検査を受けた病院に相談しようと考えました。

幸い、2週間くらいかけて、指先への痛みが徐々に治まってゆきました。

ただ、素人判断はよくないので、もし私と同じようなケースになったら(もっとも滅多に起きないことだとおもいますが)念のため医者に相談したほうがいいとおもいます。

カテーテル検査と3D-CT

受診する側の視点での、カテーテル検査とCT検査の重要な違いは、

  • カテーテル検査は血管の収縮のしやすさが検査できる。3D-CTはできない
  • カテーテル検査は3D-CTより精度が圧倒的に高い
  • カテーテル検査は3D-CTより死亡リスクが二桁高い

CT検査は、余計な疑念を抱いただけ損で、無駄な検査となってしまいました。検査精度の差が効いてしまった結果です。

当初は、動脈硬化だけ心配していたので、私が受けた64列のCTではなく、最新の256列、320列のCTだったら、私はカテーテル検査まで受けることはなかったかもしれません。

ですが、CT検査はともかく、カテーテル検査は定期健康診断のように気軽に受けられる検査ではありません。振り返って3D-CTから受けた流れは仕方なかったかなとおもっています。

もちろん一般的には、人それぞれ状態に違いがあるので、医師とよく相談の上きめるべき、と常識的な結論になります。

不摂生という後ろめたさ

血管の痙攣のしやすさは少々気がかりでしたが、動脈硬化でないことがはっきりしたので、 ひとまず様子をみていこうとおもいました。

人の体は複雑なので、可能性をつきつめればキリがありませんが、カテーテル検査を受けたことで、十分に調べきった、という気持ちにはなれました。

検査後は多少の動悸や気分の悪さがあっても気にならなくなり、数週間で動悸や胸痛などの症状は治まりました。医師のいうとおり、今は心因的なものだったと考えています。

ただの体調不良から、なぜカテーテル検査まで受けることになったかと考えると、原因としては、

  • 長期にわたり不摂生の自覚があり、それを状況証拠のように捉えた
  • コレステロール値が悪かった
  • 心臓だけに「死」のリスクがつきまとい、検査を受ける他なかった
  • 運悪く、CT検査で判断がつけられなかった

このなかで、最も大きな原因は不摂生のうしろめたさではないかと思います。人生の中で、体調が悪くなることぐらい、いくらでもおきますが、今回は不摂生のうしろめたさが症状を持続させてしまったのではないかと。

医師の話によると、私のように「心臓の健康を確かめるため」に心臓検査を受けにくる方は少なくないそうです。

禁煙ができたこと、生活習慣を改めようとおもえたことは収穫でした。動脈硬化になったら、薬では元にもどりません。そのことに自覚的になれました。そして正直、カテーテル検査はもう受けたくないです。

不健康な生活が心理的な負債となって、こんな形でそのツケをはらうことがある、というおはなしでした。CTについては・・・まあ、もうおわったことです。